【神様のカルテ】を読む
余命○年
星になった○○
タイトルからしてお涙を誘うようなら手にしない。
読者を泣かそう泣かそうと手ぐすね引いているのがわかると、「そんな手に乗るかい!!」と天の邪鬼な僕は読む気が失せてしまう、、、実にめんどくさい人間だ。
【神様のカルテ】
そういえば映画化もされていたな・・・
と、今更ながらに読んでみたがこれがなかなかにハマる作品だ。
栗原一止 (主人公)…信濃大学医学部卒の現役ドクター
つまり作者夏川草介をモデルにした物語だと想像できる。
一止が勤務する架空の病院、本庄病院と、一止が住まう下宿先、御嶽荘での愛すべき人間たちの日常。
病院をモデルにした物語だから生と死を描写した場面は当然ある。
あるが違和感なくすっと心にしみる感覚はドクターたる目線がしっかりとしているからかイヤミもなく、美化することなく淡々としていながらも知らず知らずのうちに感動という底なし沼にハマってゆく。
ハマる要因は魅力ある愛すべき登場人物たち、一癖二癖も三癖もある人間像。
そして本・コーヒー・酒・季節ある自然という、狸や狐・ドクターと患者・芸術家や哲学者・夫と写真家云々かは関係なく、誰にでもある日常が絶に妙にマッチする。
特に本は、作者夏川草介自身がなかなかの本好きなのかが分かる。
元々夏川草介の作品は 【本を守ろうとする猫】の話を最初に読んだのだが( 本を守ろうとする猫の話の書評はまた今度) 【本を守ろうとする猫】の話で感じたように、【神様のカルテ】でも、時代を超えた名著のエッセンスがそこかしこに散りばめられている 。
文章の表現などは最たるもの。
現代作家作品ばかり読んでいて、海外作家の翻訳された文章が苦手である僕が、海外作品や夏目漱石を読んでみようかと思ってしまうのだ。
そうだ!
また読書という文字を一つずつ、ページを一枚ずつめくり、味わえる日常を、時間をも僕たちは楽しめるのだ!!
と、またもや本を読む坪にハマってしまったのだった。